木造トラスのクリープ試験やってます!
(2019年10月時点 2年経過 継続実験中!!)
平成25年度より岐阜県木連が中心となり、岐阜県産材ヒノキを使用した木造平行弦トラス(通称ハリーさん)の開発を行ってきました(WOOD ACはコンサル・実験の実施)。開発に伴い各種試験を行っているのですが、今回はそのうちのクリープ試験について紹介させて頂きます。
クリープ試験の目的は、「梁の変形増大係数を求める」ということになります。
⇒つまり、「建ててから50年後にどれくらい梁がたわむかを予測するための計算式の数値を求める」
というロマンあふれる実験を行っています。
屋根や床を支えている梁は、ずーーーーっと重りが常に乗っている状態なので
建てた直後よりも年月が経つとだんだんとたわみが大きくなっていく
という現象が生じます。
これを「クリープ」というのですが、そのクリープがどれくらい生じるか、一般的な製材や集成材の梁では単純式で予測することができます。
一般的な公称値として
■一般的な木造の梁材:×2.43(平成12年建設省告示1459号においては×2.0)
■屋根木造トラス梁 :×5.0(JIS A 3301木造校舎の構造設計標準)
となっており、
【例題】
告示式の<×2.0>を例に挙げると
梁のたわみ計算して、建てたときに5cmたわむ計算結果だと、およそ50年後には、、5cm×2.0=10cmたわむであろう
という計算になります。
一般的な梁は一本部材なので木材自身の性質からこの係数が割り出されいるわけで多くの設計者はこの理論式を元に梁の設計をするわけですが、
トラスとなると話は別です。
トラスには上弦材、下弦材、束、斜材と部材を何か所も組み合わせて一つの”梁”としているため、部材のたわみだけでなく、「接合部分のガタ」や「木材同士のめり込み」、「接合金物の変形」などなど、ちょっとずつちょっとずつ一つ一つが動く要素があるため、トラス梁全体が大きくたわむ結果となってしまいます。このため解析などの理論式だけでは正しい予測が難しいとされています。
と、いうわけで本当に理論式と同じ結果になるのか!?はたまたとんでもないたわみが生じてしまうのか!?
実際に重りを載せてじっくりじーーーーーっくり時間をかけて見てみようということで、
仕様・スパン・荷重を設定した上で、定期的に変位を観測し、どれだけ梁のたわみが増加しているか(クリープが進行しているか)をみています。それを踏まえて、荷重が作用している日数と荷重の相関から、変形増大係数を算出しています。
単純にたわみをみるためには、トラス梁の端部と一番たわむ中央の変位をとればよいのですが、研究者としてはなぜそうなったのか、何が原因だったのかを考察する必要があるのでより多くのデータを収集しなければなりません。
具体的には、トラス梁のどの部分で変形が大きく生じたのか、温湿度は変形に影響を及ぼさなかったか、木材自体の変形はどの程度か、考えられる変形要因は多々あります。
そのため、写真のように多くの変位計、ひずみゲージを設置しています。
木造トラス梁のクリープ試験は既往研究で少なからず行われていますが、これだけ大規模・長期間なものは珍しく、研究という意味でも有用であると考えます。
WOOD AC 坂田
※2019年10月現在、26か月(2年突破!)継続実験中!!
※ハリーさんについてのお問合せ先
岐阜県木材協同組合連合会(TEL:058-271-9941/E-mail:info@gifu-mokuzai.jp)